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エナーテ(ENATE) マルケス・デ・ムリエタ(MARQUES DE MURRIETA)試飲レポート


6月5日にエノテカ広尾店にて、エノテカ・オンライン初のワインイベント、スパニッシュ・ワイン・エクスペリアンスに参加してきました。
今回はスペインの新進気鋭のワイナリーであるエナーテ(ENATE)と、対照的に歴史ある伝統的なワインを作る。マルケス・デ・ムリエタ(MARQUES DE MURRIETA)の紹介です。

 スペインのワインというと、最近多いのはとても果実味があり濃厚な印象のあるワインですが、実を言うとこれは伝統的なスペインワインとは少し違います。ですのでスペインワインとひとくくりにするのは少々危険で主に2つの側面があると考えてよいでしょう。一つはその土地の素晴らしさを生かしたモダンなスタイルのワイン。そしてもう一つは本来のヨーロッパ的な伝統的スタイルを守り続けているワイン。今回試飲した二つのワイナリーはまさにこの二つの側面を持っていると思います。

エナーテ(ENATE)

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 エナーテ(ENATE)はスペインの北側、ソモンターノに位置する若いワイナリーです。ソモンターノとは「山麓」を意味する言葉で、ピレネー山脈の山麓に位置します。全体的に標高は高いのですが、夏は乾燥し高温になります。標高の高い場所は夜になると急激に気温が下がり、それがブドウに対しては良い結果をもたらします。
外来品種を積極的に受け入れモダンなスタイルのワインを作るワイナリーで、今回はベーシックなシャルドネとクリアンサ、そしてフラグシップのウノ・シャルドネとウノ・ティントを試飲しました。
 

2007 シャルドネ・フェルメンタード・エン・バリッカ

シャルドネから作られるスタンダードな白ワイン、6ヶ月の樽熟成を経て出荷されます。とは言ってもスペインでシャルドネというのは少し珍しいタイプです。
思ったほど色は濃くないですが、香りはとてもトロピカルな印象で心地よいです。樽からくる柔らかなヴァニラの香り、バナナの印象、そしてさわやかなだけど南国を思わせるマンゴーやパイナップル。味わいも果実味がふくよかですが、しっかりとした酸もありそれほどもったりとはしていません。ミネラルの印象も感じられますね。
全体的によくまっているシャルドネです。このタイプのシャルドネはよく見られますが安心できる作りで間違いのないワインだと思います。
意外にミネラルを感じるので魚系の料理によく合いそうです、すこし甘めのマリネとかよさそうですね。価格は3,200円です。
icon2007 シャルドネ・フェルメンタード・エン・バリッカ icon

2005 クリアンサ

エナーテの中でもっともスペイン的と言われるワインです。クリアンサとはスペインのワインに対する規定で出荷まで2年、そのうち6ヶ月の小樽熟成が求められます。品種はテンプラニーリョ70%、カベルネ・ソーヴィニヨン30%です。
色調は濃いルビー色、カベルネの印象がよく出ていますね、カシス、ブラックベリー、そして熟成からくる腐葉土のような印象、黒こしょう、クローブなどのスパイス、若干ししとうなどの香り。とても複雑味のある香りです。
味わいは酸と果実味のバランスが素晴らしく、渋みも大きく主張するする訳ではないですがしっかりとあります。全体的なバランスがとてもよく、ボルドーのような品の良さも感じられますね。
とても安心できるワインで素直に肉料理などに合わせてもいいですし、もうすこし気軽な場面でもよいでしょう。一本あるとちょっと安心できるワインですね。価格は2,280円です。
icon2005 クリアンサ icon

2006 ウノ・シャルドネ

エナーテのフラグシップワインです。価格も57,750円とかなりの額です。
高級ワインというのはいろいろな思惑が入る部分です、もちろんそれに見合うだけのコストをかけているのは事実でしょう、ですがだからといって売れるという訳ではありません。フランスはそれを長い時間かけて作り上げてきました。伝統という名のブランドがあるのです。
ですが、それだけでなく新しい物にも目を向けていかなくては発見はありません。もしかしたら全然違う場所に全然違う物が眠っているかもしれません。それを提供するのはインポーターやショップ、ソムリエの力なわけです。
ウノ・シャルドネは出来の良いヴィンテージにしか作られず、最初のヴィンテージは2003、次がこの2006。年産は900本と大変貴重なワインです。色調は濃いイエロー、若干濁っている印象がありますが、ノンフィルターだと思います。
香りは衝撃的です。ブルゴーニュのシャルドネはよく飲みますが、それとは違う力強さですね。グレープフルーツなどのさわやかさとアプリコットジャムのようなこってりとした酸が同居し、なおかつ白コショウなどのスパイスや樽からくるヴァニラ、さらにはセージやエストラゴンのようなハーブの印象まで幅広く複雑、なおかつヴォリュームのある香りです。
味わいも素晴らしく、果実味と酸がどこまでも続くような印象です。アルコールのふくよかさもあり、バランス感も見事です。
エノテカの評でDRCのモンラッシェと並べていましたが、個人的にはコルトン・シャルルマーニュのような印象に感じました、ただし力強さはムルソー以上です。
なんというか、個人的な意見を言えば賞賛すべきバカ(笑)でしょうか。失礼ですが、この土地で、このネームバリューで、5万円以上もする白ワインを作ってしまうところが。でも、それでいいんだと思います、このワイナリーを本当に好きになってくれた人たちへの最高のプレゼントとしてのスペシャルなワイン。実際、世界に900人は確実にいると思います。 ヴィンテージは2006ですが、まさに今が飲み頃の始まりです。セラーで5年はもつでしょうが、すぐに飲んでも全く問題はありません。いまそこに最高のワインがある。これは高級ワインにとって、とても大事なことなのです。
icon2006 ウノ・シャルドネ icon

2005 ウノ・ティント

エナーテからもうひとつのフラグシップの赤ワイン、価格は34,650円です。
手積み収穫、ポンピングオーバー、28℃の低温発酵、フレンチオークでマロラクティック発酵、そのまま20か月澱とともに熟成。品種はカベルネ・ソーヴィニヨン60%、メルロ20%、シラー20%です。年産は900本
このワインについてはテイスティングシートにコメントを書くのをやめました。正確に言えば書けなかった。なぜかと言えばまだまったく開いていなかったからです。テイスティング時間の2時間ほどグラスで置いておきましたが最後にはようやく開いてきたかなという印象でした。
当日ワイナリーの輸出担当マネージャーと話す機会があり、このワインの飲み頃について尋ねたところ、こちらの意図をすぐに理解したようで、セラーで5年から10年という答えでした。まだ5年しか経っていないと。
確かにボルドーの一級シャトーであればそのくらいが普通です、ここまでコストをかけたワインも同様でしょう。テイスティングの最後に感じた印象でいくと、時間をかければ確実に開くワインです。5年で全く開いていないのですから、とてつもないワインになる可能性は十分あります。これが初ヴィンテージなので保証はありません。このワインが花開くとき、エナーテの名声が大きく羽ばたくことを期待します。
そのときにこのワインを手に入れる方法はほとんど無いでしょう。今までのワインを飲んだ印象だと、賭けてみるのも悪くないと思いますよ。
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マルケス・デ・ムリエタ(MARQUES DE MURRIETA)

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 マルケス・デ・ムリエタ(MARQUES DE MURRIETA)はリオハ二で1852年から続くワイナリーです。リオハはスペイン最高のワイン産地であると同時にボルドーの影響を強く受けている土地でもあります。イガイ城を中心に280haのワイン畑を持ち、まさにボルドーのシャトー経営そのものとなっています。クラシカルなリオハはボルドーの力強さとブルゴーニュの繊細さを併せ持ち、数十年の熟成に耐えるワインも数多く作り出されています。
   試飲したワインはスタンダードな白とレセルバ、グラン・レセルバ、そしてモダンな作りのダルマウ。最近は少なくなってきたクラシカルなスペインワインを楽しめました。

2004 カペッラニア・レセルバ

 カペッラニアとは礼拝堂と言う意味です、単一畑のぶどうからつくられ品種はビウラです。ビウラはスペインでは比較的よく見る品種ですが、単一で飲む機会はあまりないですね。少し特徴的な印象がある品種です。熟成にはブルゴーニュから買っている樽で18ヶ月行います。
 香りはかなり複雑でレモンやライムの香りにドライフルーツの杏のような香りも感じられます、樽からくる香りもありますがいやみではなくほのかに白コショウやハーブの香りがまざります。
 味わいは酸が主体ですが果実味もしっかりとあり飲み応えがあります。確かに特徴的な味なのでウォッシュチーズなどにもよく合いそうです。
 ワイナリーの方は好きな人は好き、嫌いな人は嫌いと言っていましたが、それほど嫌いな人はいないんじゃないかなと思います。なかなかおいしいワインですよ。値段は3,675円です。
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2005 マルケス・デ・ムリエタ レセルバ

 クラシカルな造りのリオハはテンプラニーリョの特徴をうまく引き出す作りをします。日本では誤解も多いのですが、テンプラニーリョはどちらかといえば、ネッビオーロやサンジョベーゼ、シラー、などと共に酸を主体としたエレガントな品種とされています。これがモダンな造りですとがらりと印象が変わってしまうのですが、個人的に言えばこのエレガントさはニューワールドのワインにはなかなか見いだせない物でなくしてほしくない物です。  これはレセルバ、36ヶ月以上の熟成、そのうち樽熟成12ヶ月以上が求められますが、このワインは足る熟成を24ヶ月、瓶内で24ヶ月の熟成を経て出荷されています。
 香りはヴォリューム感がありスモーキーな樽の香り、カシスやブラックベリーなどの果実の香り、黒コショウやクローブなどのスパイスの香り、テンプラニーリョ独特の紅茶やタバコのような香りがありますね。
 味わいは果実と酸味のバランスがすばらしく、さながらボルドーのような品もあります。
 まだレセルヴバですので力強く、ある程度ボリュームのある料理にも合うと思います。ラムのローストなんかいいと思いますね。このような造りをするリオハはちゃんと選ばないと見つけにくくなりました。そう言う意味では貴重です。値段は2,940円です。
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2001 カスティーリョ・イガイ グラン・レセルバ エスペシャル

 カスティーリョ・イガイとはイガイ城という意味です、いわゆるシャトーのことですね。このイガイ城を名を冠したワインがこの「王の中の王」言われるグラン・レセルバです。
 出来の良い年にしか作らず、最近では95、98、そしてこの2001です。グラン・レセルバは24ヶ月以上の樽熟成を経たのち、36ヶ月の瓶内熟成が求められますが、これはアメリカンオークで34ヶ月の樽熟成を行います。
 色は多少レンガ色が混じりますが、まだまだ濃いルビー色です。  香りは塾成功が強くなり、タバコや枯れ葉、紅茶などのニュアンス、若干なめした皮のような印象、果実の香りは小さくなっていますが、しっかりと感じます。クローブなどの香りに若干漢方薬のような香りもありますね。
 味わいはグラン・レセルバだけあって酸が主体の繊細な物ですが、アルコールのヴォリューム感は素晴らしくの見応えがあります。とても味わい深いワインですね。
 スペインのグラン・レセルバは古酒という印象を持つワインではとても質が高く安心できるものです。それでいてしっかりとした風格を感じさせるのはさすがですね。このワインは繊細な味わいなのでガッツリ系の料理だとワインの良さを損なってしまいます、それなりにしっかりとした食事に合わせることをお勧めしますよ。大変おいしいワインです。値段は7,875円です。
icon2001 カスティーリョ・イガイ グラン・レセルバ エスペシャル icon

2004 ダルマウ

 マルケス・デ・ムリエタでもっとも新しいワインがこのダルマウです。樹齢65年というカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドしクラシカルな造りのほかのワインとは違い、とてもモダンな造りとなっています。ワイン名はオーナーであるクレイセル伯爵家のヴィンセント・ダルマウ・セブリアン・サガッリーガに由来します。
 面白い話ですが、本来DOCリオハはカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドすると名乗れなくなってしまうのですが、マルケス・デ・ムリエタはその法律以前からワインを作っていたので例外的に名乗れるのだそうです。
 色合いは濃いガーネット、この時点で今までとは違いますね。
 香りはさすがモダンというだけあってしっかりとしたカシスやブラックベリー、ブルーベリーなどの熟した印象の香り、樽からくるコーヒーやロースト香、血や肉の印象がありますね。この香りのバランスは絶妙で、ただ果実の香りと樽の香りを追い求めたような単純な印象ではなく、非常に複雑で印象深い香りです。このあたりはさすがに歴史あるワイナリーだなとうならせるものがあります。
 味わいも果実味が主体となりますが酸と渋みもあり、アルコールのヴォリューム感もかなりありますね。クラシカルなリオハは酸が主体となるのでちょうど入れ替わったような印象で飲み応えがあります。
 おそらくこのワインをリリースする際にはいろいろな議論があったことでしょう。歴史を守るだけでは先には進めないことはわかっていますが、だからといって安易な物は出せない。そんな試行錯誤がこのワインから読み取れます。香りに感じたなんともいえない不思議な感じはそのまま醸造家の不安なのかもしれませんが、それでも前に進もうという気概が感じられます。
 合わせる料理はすこしエスニックな感じが意外に合うと思います、アニス風の角煮ですとか、クミンを使ったものですとかそんな物と合わせてみるとおもしろいかもしれませんね。値段は13,650円です。
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